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土地家屋調査士について考える

平成25年3月5日(火)
 平成22年9月15日静岡境界紛争解決センターが全国第78番目(調査士相談センターとしては全国10番目)の法務大臣認証民間調停機関として発足した時から運営に関わらせていただき今年度で2期目を迎えることになりました。センターでは無料相談を定期的に実施しています。その中で必ずしも全ての相談が紛争性のある案件というわけではありません。むしろ土地家屋調査士に対する苦情処理案件が多いのが実情です。
 土地家屋調査士が境界確認業務に入る前まではほとんどの相談者にとって隣接地関係者との土地の境界を意識(認識)するこは生活の中でなかったようです。それらの相談の中から垣間見ることができる調査士の姿を通して期待される調査士像を探ってみたいと思います。
土地家屋調査士の業務の公正さに関しては一般に理解されているといって良いと思います。法令遵守あるいは技術研鑽の面ではマニアックなほど努力していると思います。
戦後の高度成長期の波に乗り調査士は事件数の増加に伴い1件あたりの処理時間の短縮などのコストの削減を図るべく設備投資を初めそれに伴う測量技術の向上に努力してきました。対策としてはアナログからデジタルへ更にIT化へと進めてきたわけです。
ただ、最近は事件数の減少により損益のバランスが微妙になった結果逆にそれらがコストを押し上げる事態も起きている場合もあると思います。
 測量業務に関して言えば不動産登記法改正による登記基準点測量あるいは世界測地系による測量図の作成などによって今までのコスト削減分以上にコスト(人的コスト・設備的コスト・時間的コスト)が掛かってしまっているといった状況が続いていると思います。コスト上昇分を直ちに報酬に転化可能な経済状況であるならばとりたてて悩むことは無いのですが近年の地価の下落傾向に加えて東日本大震災の影響もあって対応が難しい現状だと思います。
 高品質な仕事をしようとするとコストが掛かるのは当然であるわけです。製造業などにおいては「ハイクオリティー・ローコスト!」がお題目のように叫ばれています。そして標準化され大量生産され外注化されコスト削減を徹底的に行っているわけです。土地家屋調査士業務とりわけ不動産登記に係わる測量業務に関しては標準化あるいは裁量化がその本質において困難な業務であります。測量作業の標準化は既に相当部分進んでいると思います。しかしながら、測量業務には境界確認作業すなわち隣接地ならびに関係土地所有者と係わり同意を得る場面が必ずあるわけです。むしろ測量作業よりも境界確認作業の方が業務内容の中では重要な大きなウエイトを占めるといって過言ではないと思います。
 土地家屋調査士は長い間自身ではコスト削減を図っている行為であるとは気付くかないままに境界確認作業の裁量化をしてきました。すなわち境界の専門家である土地家屋調査士が素人である一般の方に代わって境界を探し出してあげるといったイメージでしょうか。従って土地家屋調査士の頭の中だけで境界を探し出し調査士自らが納得するといった奇妙な状況が生まれるのです。所有者並びに関係者にしてみれば境界を探し出すまでのプロセスや関係者に対する十分な説明や事情を聴くこともないままに性急に境界同意を求められるといった気持ちを抱くのも頷けます。
 土地家屋調査士の側から考えれば所有者並びに関係者の事情をいちいち聴いていたのでは作業効率が悪くてなかなか作業が進まないということになるわけです。つまりコストが増大する結果になるわけです。そこで境界確認業務の裁量化が起こるわけです。
 先ほど高品質について触れましたが製造業などにおける高品質と境界確認業務においての高品質はかなり異なるのではないかと思います。
サービス業に分類される土地家屋調査士業における境界確認業務の品質とは何かを問い直す必要があるのではないかと思います。測量技術は調査測量要領などでかなりの部分標準化されています。しかしながら何度も申し上げるように境界確認作業は書式などの標準化(立会証明書・筆界同意書・官民境界申請事務)はなされています。ただ、実質的な境界同意を得るに至るまでのプロセスあるいは方法は当然ではありますが標準化されていません。されていないと言うより標準化出来ないといった方が正確なのかもしれません。しかしながらこの部分こそが境界確認業務における根幹部分とも言えるわけです。この最も大切な部分を調査士は無自覚ではあるにしても疎かにしてきた傾向は否めないと思います。
 調査士は長い間、境界紛争予防に関する実践者として社会的使命を果たしてきたと思います。ただ社会全体がコンセンサス社会のうちは調査士の裁量型作業方法も機能していたわけですが徐々にコンフリクト化していく社会においては個別型作業方法に転換していく必要があると思います。ただ理想の調査士であろうとすればするほどそこには相当のジレンマが顕在化してくると思います。
では相当なジレンマを起こすような境界確認業務における個別型作業の本質は一体何でしょうか。
当然本質に関わるスキルは一つだけではありません。ただ、どうしても大切な一つを上げるとすれば「聴く」というスキルです。
 あれ、そんな簡単なことか。私は「話す」ことは苦手だけれども「聞く」ことなら大の得意さとおっしゃる方は多いと思います。また、さっきは調査士は確認作業で説明が不足していると言ったばかりではないか。すなわち「話す」ことが大切と言ったのに「聞く」が一番とはどういうことだ!と思われた方も多いことと思います。
 よく、口は一つなのに耳は二つもあるのは一言話したら二言聴きなさいということだと言われます。
ちなみに私がお勧めする「きく」は「聞く」でなくて心が入っている「聴く」スキルです。普段の生活の中で会話をするとき「聴く」だけといった状況は希なことだと思います。むしろ普通は「話したい」という欲求の方が強い場合が多いのではないかと思います。「話したい」欲求とはつまり相手に「聴いてもらいたい」という欲求なわけです。
 境界確認作業において調査士は専門家として所有者ならびに関係者に接するわけです。相手は「専門家の話を聞きたい」というよりもまずは「専門家に話を聞いてもらいたい」欲求の方が強いはずです。
病気で医者に接する自分自身を想像してみて下さい。医者がほとんど患者であるあなたの話を聞きもしないで、本当は重大な病気の初期症状にも関わらず「わかったわかった、単純な風邪ですね。風邪薬を出しておきましょう。お大事に。」あるいは「わかったわかった、初期の鬱状態ですね。抗鬱剤を処方しておきましょう。お大事に。」などと言われたらどんな気持ちがするでしょうか。ましてや、たいして話を聞いてもくれずろくな説明もないままに「手術をするから同意書に署名捺印して!」などと言われてせかされたらどのように感じるでしょうか。
 また、相談業務の中では「調査士相談員に図面を見せるな!」と言われています。なぜでしょうか。相談者の話を「聴く」よりも公図や測量図を読み解いた法が楽だからです。そこには調査士の考える境界問題は「事実」の中に存在するものであり「事情」の中に存在するものではないという思いこみがある。従って事実が明らかになれば問題は解決するものだと考える傾向にある。しかしながら問題は事実のうえにあるのではなく当事者の頭の中(心の中・意識・無意識)にあるものである。
「境界の上には関係者の思いが幾重にも絡まっている。」と言われます。つまり「聴く」ことによって関係者の思いを知ってその絡み合った思いをほぐしていく作業が境界確認作業であると思います。それは調査士にとって高品質ではあるがコストの掛かる作業であるわけです。しかし同時に社会全体から考えると境界紛争のコストを下げる作業でもあるわけで社会貢献であるのです。
 調査士のジレンマはここにあるわけで高品質な仕事をしようとするとコストが掛かる。掛かったコストが必ずしも報酬に反映されない。特にわたしが推奨している「話を聴く」ことに対する報酬など料金表にすら無い。また、ときには「過剰品質」とさえ言われることがある。ただ、品質を下げるとその場は良くても事後に専門家責任を追及されたり苦情や紛争が発生したりする。
わたしは調査士が「技術家」から「人の思い」にも関わる専門家(境界問題カウンセラー)として変貌して いくことが今求められているのだと思います。それには人の心に関わることに対する覚悟を畏怖の念とともに持つことが大切だと思います。
(静岡会志太支部研修で話したことを要約しました。)









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認定調査士

平成24年6月15日(金)
認定土地家屋調査士(土地家屋調査士法第3条2項2号によりADR代理能力を認定された調査士)は単独でADR(裁判外紛争解決手続)相談を業として行うことができるのだから境界の紛争問題で悩んでおられる方々の力になって欲しいと思います。その為には、今まで以上にスキルアップを図る必要があると思います。その後、「境界問題カウンセラー(仮称)」として境界問題の解決に向けた取り組みや紛争予防的な活動について積極的に行うことが要請されていると思います。それらの業務や活動がスムーズに出来るようにするためには人材の育成が欠かせないと思います。ADRセンター運営委員会などが本会に働きかけ協力しあって「境界問題カウンセラー養成講座」を開講するなどして一人でも多くのADR実務家を増やし積極的に活動していくことが望まれているのではないかと感じています。
なぜカウンセラーが必要なのかといえば境界紛争(問題)として顕在化している事象の奥あるいは背景の中に問題の本質が埋め込まれている可能性が高いのではないかと言う理由によります。現在まで土地家屋調査士は登記事務や測量技術あるいは筆界鑑定理論及び鑑定技術などのどちらかというとハード面の研鑽については継続的に行ってきたと思います。
ただ、ADRに関わろうとする場合上に述べた土地家屋調査士としてのしっかりした土台の上にさらに人の心に関するスキルを身につける必要があると考えます。そしてADRにおける相談や調停を通して人の心に関わることへのある種の畏怖の念(ベースに畏敬の念を感じつつ)と覚悟を持たなければならないと思います。多くの認定土地家屋調査士がそのステージを目指して研鑽努力することによって確信をもって「境界問題の専門家」は認定土地家屋調査士であると言うことができる時が近い将来くることを期待しています。

公図雑感

平成24年3月6日(火)
土地の筆界を見つけ出すことはかなりの困難を伴うことが多い。筆界の定義は不動産登記法123条1項に定められている。簡単に言えば、土地が表題登記された時に境界とされた2点以上を結ぶ直線を筆界という。古くは明治時代初期の地租改正によって図面に公示された頃の境界(原始筆界)を指すことになる。登記所に備え付けられた地図に準ずる図面(公図)はほとんど地租改正当時のものであると言われてる。作成当時(明治時代)は日本画のように美しかった公図も現在ではかなり破損が激しく閲覧には耐え難いので昭和47年からマイラー再編作業が行われ今に至っている。しかしながら既にかなり破損が進行していた公図をポリエステル・フィルムにトレースしたため再編の信頼性において相当劣るものも見受けられる。また今日では、そのマイラー再編地図をデジタル化するようになったため見かけは非常に信頼性ある図面のように一般利用者には思われている。
美しい日本画の破損を修正することなく西洋画に描き直されたと言ったら言いすぎでしょうか。
そのような状況の中で地租改正当時の筆界(原始筆界)を推定できる拠り所のひとつとしてのマイラー図面(公図)にいささか疑義があるので筆界の発見には相当の困難が生ずるといってよいと思います。そのため不動産登記法14条地図の完成が待たれるところです。また法14条地図作成作業には、筆界(境界)の専門家である土地家屋調査士を必ず関与させるような方向が望ましいと考えます。



制度

平成24年3月4日(日)
土地家屋調査士会型組織は実は近代(国家)的でないのではないかとこの頃感じています。私たちが信じている近代民主主義に対する幻想がそのまま調査士会型組織(システム)に投影されているように思います。
近代国家成立以前は、封建制度(領主制度・藩制度)によって成り立っており各領主による法に従って領民は支配されていました。よって同じ事件でも各藩による法の違いによって領民は裁かれていたのが実情でした。
近代国家(明治政府)は、法の中央集権化(一元化)と私的所有権を推進することで形式的近代化を図りました。
現在の土地家屋調査士会を取り巻く環境を見ますと全国50ある法務局・地方法務局がまるで封建制度における藩のようであり領主である法務局長と領民である土地家屋調査士が各法務局単位で協定(調査測量要領など)を結んでいる様はまさに近代国家とは思うことができない状況です。
ましてや土地家屋調査士の意見の代表であるべき日本土地家屋調査士会連合会は、悲しいことに単に全国50の土地家屋調査士会の連合会組織であって1万8千土地家屋調査士の連合会ではありません。一般土地家屋調査士には連合会会長を選ぶ権利も会長に立候補する権利もないのです。
近代民主主義と言われている制度は、どちらの側に立った制度なのでしょうか。現代の土地家屋調査士会型組織で言うならば法務局(領主)側に立った制度なのか土地家屋調査士側(領民)に立った制度なのか・・・・。近代民主主義が我々の意識における幻想とするならば、未だ我々は封建制度から抜けていないことになるのですが・・・。



調査士会②

平成23年6月14日(火)
本来、法務局の意向を会員に伝達することや法務局に代わって会員の秩序維持をすることを主たる目的とする土地家屋調査士法に基づく上意下達型の強制会(入会しないと業務をすることが出来ない法律に基づき設立された会)である調査士会に構成員である会員による代議員制を実質的に目指しつつあることは大いに評価すべきことではないかと思います。
先に述べたようにここ1・2年の状況をみるとやや後退傾向にあるように感じられるのでもう少し一般会員による議論の盛り上がりが必要だとも感じています。
これからは会員として特に認証機関である調査士会ADRの充実ならびに筆界特定制度への協力(代理人としてまたは筆界調査委員として)が今までの調査士会の運営ベクトルの方向性を変え得る機関になるのではないかと考えています。



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宮澤正規

Author:宮澤正規

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